『丁場紀行』アンゴラ丁場紀行 No.12-1

今回で『丁場紀行』12回目の発信です。前回は『ギリシャ丁場紀行 後編』を案内しましたがいかがでしたか?
イタリア在住の石屋仲間からは、『仕事ではあるけども、紀元前の歴史とギリシャの石文化を今なお継承している尊い仕事を我々は大切にしてゆかなくてはならない責任の様なものを読みながら感じた。』、東京工業大学の先生からは、『大学の建築史の授業も実際にしっかりと遺跡を見ている三木さんのような人に教えてもらう方が学生も幸せなのになあ。』とかのお言葉を頂き恐縮しています。特に遺跡については丁場紀行を書くために調べてまとめただけですから・・・・お恥ずかしい。
そんな中で、今回は某工事に採用された『アンゴラブラック』の丁場へ2023年5月に訪問する機会があったので、皆さんが訪問する事はないであろうと思う『アンゴラ丁場紀行』を案内します。アンゴラ産の石種自体が少なく、石以外の景色や食べ物の写真が多くなりますが、飽きることなく楽しく読んで頂けると思います。皆さんの知らないアンゴラを満喫して下さい

まず、アンゴラを理解して頂くための基礎知識です。【詳しくはネットをご覧ください。】
・正式国名 : アンゴラ共和国 (Republic of Angola)
・面積 : 約124.7万km2 〔世界22位、日本の約3.3倍〕
・人口 : 約3,558万人 〔2022年〕
・首都 : ルアンダ 〔2022年時の人口 約908万人〕
・民族 : オヴィンブンドゥ族(約37%)、キンブンドゥ族(約25%)、バコンゴ族(約13%)等
・言語 : ポルトガル語(公用語)、その他ウンブンドゥ語等
・宗教 : カトリック(41%)、プロテスタント(41%)、無宗教(12%)、アニミズム(0.6%)、ユダヤ(0.2%)
・通貨 : クワンザ
・為替レート : 1,000クワンザ=約180円 (2024年2月時点レート)
・略史 :『丁場紀行』アンゴラ丁場紀行 No.12-1 ・主要産業 : 〔鉱〕 石油(アフリカ第2位の生産国)、ダイヤモンド(アフリカ第3位の生産国)
        〔農〕 トウモロコシ、フェイジョア豆、砂糖、コーヒー、サイザル麻 
・食文化 : 
アンゴラの主食はキャッサバ芋(タピオカの原料)やトウモロコシの粉を湯と混ぜて餅状にした『フンジ』であり、肉や野菜をパーム油で煮たシチューのような『ムアンバ・チキン』と一緒に食べる場合が多い。
*残念ながら今回の訪問では食べる機会がありませんでした。その他、旧宗主国のポルトガル料理やその植民地であったブラジル料理の影響を強く受けています。
『丁場紀行』アンゴラ丁場紀行 No.12-1
・アンゴラの位置 :
アフリカ南西部にある共和制国家。東はザンビア、南はナミビア、北はコンゴ民主共和国と国境を接し、西は大西洋に面する。
*後で今回のスケジュールと一緒に地図を記載します。
・経済概況 :
1975年独立以来の長期にわたる内戦により経済は極度に疲弊したが、石油、ダイヤモンド等の鉱物資源に恵まれているほか農業、漁業の潜在能力も高く、過去10年間、概ね高い経済成長率を維持。特に石油はナイジェリアに次ぐ産油国。2007年には石油輸出国機構(OPEC)に加盟。一方、アンゴラ政府は石油依存型経済からの脱却を図るため、国家開発計画の下、農業、製造業の振興等による産業多角化を喫繁の課題として挙げている。
・治安 :
在アンゴラ日本大使館 治安情報より
2002年の和平(政府軍とUNITA軍との停戦合意)以降、ルアンダ市内の治安状況は、内戦中に大量に流入した国内避難民等がそのまま都市部に定住した結果、市内の至る所にスラム街が形成されており、貧困等を背景とした窃盗、強盗等が頻発しています。またアンゴラの小型武器保有数は人口の3分の1とも言われており、銃犯罪も増加傾向にあります。日中、人通りの多い繁華街でも強盗犯罪が発生しているので、外出の際は十分に気を付けなければなりません。
*一般にアンゴラは警察の権力が強く、路上での尋問、連行等が見られ、また外国人に対する不当な金銭や物の要求もあるのでその場合は、冷静に対応しなければなりません。
*注意は治安だけでなく、約20年間以上続いた内戦のため、アンゴラ全土で約1,000万個の地雷が敷地されている。
『丁場紀行』アンゴラ丁場紀行 No.12-1
前置きはこれ位にして本題に入ります。

アンゴラに入国するには『アンゴラ入国ビザ』を取得しなければなりません。これが簡単でないのです。
インドや中国等のビザ取得はビザ書類代行旅行代理店に依頼出来ましたが、アンゴラを訪問する人が少ないのか代行業社がなく、自身で書類を準備して、自身で東京都世田谷区のアンゴラ大使館に出向いて申請しなければなりません。
その際には、黄熱病予防接種証明書(俗に言うイエローカード:接種10日目から10年間有効)の原本とコピーが必要なのです。
その他、必要書類は後ほど書きますが、まずは黄熱予防接種について説明します。

◆黄熱病は、急性ウイルス性出血熱のひとつで、サル及びヒトを宿主としヒトにはマラリアやテング熱と同様にウイルスを保有する蚊(主としてネッタイシマカ)に刺されることで感染します。急激な発熱や頭痛、筋肉痛、嘔吐等で発症し、3~4日後に自然治癒することもありますが、重症例では黄疸や腎不全や出血症状をきたし、発症した時の致死率は20~50%です。しかし、黄熱病には有効な予防接種があり発症を防ぐことが出来るのです。

◆黄熱病ワクチン接種を東京駅から歩いて5分ほどの『公益財団法人 日本検疫衛生協会』で接種しました。
事前電話予約し、指定日時に一緒にアンゴラに行く当社の高木君と行きました。受付を済ませ、最初に問診票に記入し、2人同時に先生からの問診を受けます。その時の先生との会話を紹介します。
*先生 : アンゴラは仕事ですか? 伝染病に注意しなければなりません。治安が悪い国なので注意が必要です。
*三木 : もちろん仕事です。事前に会社へ海外出張申請して承認されています。
*先生 : 仕事ならば止めませんが、充分に伝染病には気を付けて下さい。
*高木 : 参考に先生が推奨するワクチンは何ですか?
*先生 : 黄熱病ワクチンは必須です。他に推奨はA型肝炎、B型肝炎、狂犬病、破傷風、日本脳炎、マラリア等です。医師としては全ての予防を推奨するとしか言えません。黄熱は20万人に1人は発症し死亡します。
60才以上はその10倍の確率で死亡します。三木さん貴方は2万人に1人に当たりますよ。
*三木 : 高木さん、どんな予防接種を受けても、飛行機事故、交通事故、銃犯罪等で死ぬ時は死ぬんやからな。
*先生 : そういう意見もありますが、高木さんどうしますか?【その後、先生は私に話しかけませんでした。】
*高木 : では、必須の黄熱病ワクチンとマラリアの薬をお願いします。
*先生 : 黄熱病ワクチンは生ワクチン接種で、マラリア予防は錠剤(マラロン)です。6日間出張なら11錠必要です。
問診は終了し黄熱病ワクチンを接種し10分間待機し、マラリア予防薬と黄熱病予防接種証明書を受取り終了です。
参考に費用は、黄熱病ワクチン 23,000円、マラリア予防薬マラロン 9,900円(900円/錠×11錠)です。

■皆さんはインフルエンザや新型コロナのワクチンを接種していると思いますが、ワクチンについて一緒に勉強しましょう。
ワクチンとは、病原性(毒性)を完全になくしたり弱めたりした病原体の一部などを接種することで、免疫システムが次の病原体の侵入に備えるようにして、重篤な感染症を予防するための薬です。ワクチン接種後に病原体が侵入してもこのような免疫システムの備えによって速やかに病原体を攻撃排除する事が出来ます。
*簡単に言えば、ワクチンを接種する ➡ 次の病原体の侵入に備える ➡ 病原体が侵入しても速やかに排除できる。更に詳しく書けば、ワクチンには『生ワクチン』と『不活化ワクチン』の2種類があります。
『生ワクチン』とは、生きているが弱毒化した病原体を接種するもので、病原体は体内で増殖するため、強力な免疫力が得られます。黄熱病、麻疹(はしか)、風疹、おたふく風邪、水疱瘡ワクチン等が生ワクチンに相当します。
『不活化ワクチン』とは、感染力をなくした病原体や、無毒化した毒素(トキソイド)を接種するもので、免疫力が得にくく複数回の接種が必要になります。インフルエンザ、日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎ワクチンが不活化ワクチンに相当します。
新型コロナのワクチンは、上記の生ワクチンとも不活化ワクチンとも異なった、新しい発想で作られたワクチンです。『mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン』と呼ばれています。RNAとはリボ核酸という遺伝子の事です。
我々が接種したモデルナ製、アストラゼネカ製、ファイザー製のワクチンは皆、この『mRNAワクチン』です。

◆黄熱病接種証明書が取れたので、いよいよアンゴラ大使館へのビザ申請です。(事前に大使館HPよりビザ申請予約必要です)
(A)アンゴラ大使館場所 : 東京都世田谷区代沢2-10-24 閑静な住宅街に所在します。
(B)ビザ申請 必要書類 : 下記を準備して、ビザ発給料を事前振り込みしなければなりません。
   ・ビザ申請書 : 申請書に英文で自身が手書きしなければなりません。(旅行社に例を作成してもらいました。)
   ・パスポート原本 : パスポート有効期限6ヶ月以上残存、未使用査証欄見開き2ページ以上必要です。
   ・パスポート顔写真掲載ページのカラーコピー(A4サイズ)
   ・写真 : 縦 5cm × 横 4cm カラー写真、背景は白
   ・黄熱病予防接種証明書の原本とカラーコピー1枚(A4サイズ)
   ・アンゴラ共和国の公的機関または民間団体からの招待状
   ・アンゴラ共和国滞在1日あたりUSD$200相当の円を所持している事を証明できるもの
      *会社発行のGuarantee for necessary expenses のレターでOKでした。
   ・アンゴラ共和国滞在中の保証書(会社または個人)
      *会社発行のLetter of Guarantee のレターでOKでした。
   ・ホテルの予約証 : うっかり忘れて行ったが受付けてくれました。
   ・ビザ発行手数料(7,980円)支払い済みATM利用明細書
(C)予約した日時にいざ出陣です。さすがの私も直接大使館に出向いてのビザ申請をするのは初めてでした。
車を駐車場に駐車し住宅街を探索し、ようやく見つけました。想像よりも大きい立派な門があり、インターホンで『ビザ申請予約している三木と高木と田島です。』と伝えたら、自動で門が開いたのでゾロゾロと入りました。
外交官ナンバー公用車が駐車されている駐車場を抜けてキョロキョロしながら歩くと、建物の右側にビザ申請入口があり、恐る恐るそれらしい部屋に入ると受付嬢(年配の太ったアンゴラ人)が対応してくれました。
必要書類を提出したら、担当者が確認しながらの受付です。不備がなければ受付終了。その後少し待つだけです。
20分位待ったと思いますが、名前を呼ばれて写真のような『ビザ引換証』を渡されてビザ申請が終了です。
パスポート引取は本人が10日位後に大使館で引換証と交換です。これでアンゴラに入国可能となりました。
『丁場紀行』アンゴラ丁場紀行 No.12-1

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